病理切片染色画像への深層学習モデルを用いた精巣腫瘍の識別精度の検証

病理診断は患者から採取された生体組織を病理医が観察して行う医療行為であり,様々な疾患に対して確定診断となることが多い.一方で,診断時には各組織型の占拠割合の記載が必要となるが,本研究で取り扱う精巣腫瘍は,症例が少ない組織型や複数の組織型の混在等があるため,割合を求めるための作業負荷が大きい.深層学習を活用し,診断前に組織型ごとにその大まかな割合が算出できれば,診断コストを大幅に削減できると考える. 

本研究では,深層学習アルゴリズムであるYOLOv8-segを用いて,病理切片染色画像から精巣腫瘍の組織型を学習させ,推論を行う.組織型ごとにアノテーションを行った5枚の病理切片染色画像を用いた.含まれる組織型は,胎児性腫瘍,絨毛癌,卵黄嚢腫瘍,奇形腫である.各画像を細胞が視認できるレベルまで細かく分割し,データセット数700枚程度で追加学習を行った. 

Fig. 1:病理医によるアノテーション画像
Fig. 2:YOLOv8による予測画像

正常領域を含めた画像全体の正解率は1枚目(Fig. 2)96.96%2枚目88.04%3枚目58.20%4枚目88.19%5枚目96.10%となった.  

用意した画像は,主に胎児性腫瘍の領域が大きく,胎児性腫瘍以外の4種類の領域は微小領域であったため,正解率への影響は小さい.そのため,今回の正解率の高さは,胎児性腫瘍の領域の検出精度の高さと言え,最も卵黄嚢腫瘍と奇形腫の領域が大きい3枚目の画像では学習が不十分のため,正解率が低い.

今後の展望として,さらに10枚程度の画像を追加し,胎児性腫瘍の領域以外の精度を上げたいと考える. 

Publication

  1. 病理切片染色画像への深層学習モデルを用いた精巣腫瘍の識別精度の検証、田中 幹飛、高橋 泰岳、村元 暁文、築地原 里樹、第64回日本生体医工学会大会予稿集、O1-3-3-3、pp.362-364, 2025.6

アイロン接着導電布による使い捨てマスクの簡易コンデンサマイク化の提案と試作

感染症対策や衛生意識の高まりから,マスクは日常生活で馴染み深い存在になっています.工場など,マスクを着用したまま作業や会話を行う場面がありますが,そのような環境でコミュニケーションをとるときに必要なマイクは,騒音環境で使用すると発話だけでなく周囲の音も一緒に録音され,音質や認識精度に影響します.そこで本研究では,騒音環境下でも利用可能なマイクとして,不織布マスクをベースとした,低コストで簡便なマスク一体型マイク(布マイク)を提案します.

 

Fig. 1:マイクの動作原理

布マイクは,コンデンサマイクの原理を元にしています.コンデンサマイクは誘電体を,2枚の電極で挟み込んだ構造をしています.布マイクではこの電極を導電布,誘電体を不織布マスクとして,利用しています(Fig. 1).

Fig. 2:布マイクで計測したメルスペクトログラム(外部ノイズあり)
Fig. 3:ピンマイクで計測したメルスペクトログラム(外部ノイズあり)

ノイズを与えた条件で布マイクとピンマイクで同時に録音したデータをメルスペクトログラムで比較すると,布マイクは明らかにノイズ成分を抑えていることが確認できました(Fig. 2, Fig. 3).

今後は,より多様な話者の条件での性能を確認していきます.

Publication

  1. アイロン接着導電布による使い捨てマスクの簡易コンデンサマイク化の提案と試作、唐沢 圭吾、高橋 泰岳、築地原 里樹,第41回 ファジィ システム シンポジウム/FSS2025、1A1-5、2025

視線入力によるコミュニケーション支援ロボットの開発

本研究では,身体を自由に動かすことが困難な人でも意思や感情を伝えられるように,視線のみで操作可能なコミュニケーションロボットの開発を行っています.ユーザーはPC画面上のインターフェースを注視することで,ロボットの移動や感情表現を選択することができます.また,ロボットのカメラ映像を用いて遠隔から周囲の状況を把握しながら操作可能な構成となっています.

視線入力の誤操作を抑えるため,視線データの平滑化や瞬きの除去を行い,ポインタの安定性向上と誤操作の減少を確認しました.また,ロボットに感情表現や動きを付与した場合と付与しない場合で印象評価実験を行った結果,表情や動きを伴うロボットの方が親しみやすさや好印象が向上する傾向が見られました.

現在は会話支援機能の開発に取り組んでいます.ロボット「まるット」のカメラ映像から YOLOv5 によりキーワードを検出し,それを基に ChatGPT のような大規模言語モデルが複数の発話候補を生成します.ユーザは視線で発話内容を選択し,ロボットが代弁することで会話を行います.今後は,対話の流れに応じた候補生成を行い,より自然で円滑なコミュニケーションの実現を目指します.

Publication

  1. 遠隔操作ロボット「まるット」の視線操作インターフェース、松下 稜,高橋 泰岳,春名  正樹,築地原 里樹、第41回 ファジィ システム シンポジウム/FSS2025、1A2-1、2025

収量予測のための三次元点群処理と骨格化による樹モデルの枝半径・角度の計測と評価

収量予測は,収穫や販売計画を立てる上で重要です.樹冠の構造を正確に把握することで,収量予測の精度向上に繋がります.農家の感覚として各主枝の元気度が角度に表れているため,構造情報の枝角度と半径に着目しました.点群上での角度計測ではスケルトンを用いることで,中心線での精度の高い計測を行うことができます.

そこで本研究では,三次元点群処理と骨格化による枝半径・枝角度計測の精度と信頼性の検証を行なっています.

Fig. 1:グラフ(ケルトングラフ:左,トポロジーグラフ:右)

実験では,真値を確保するために角度を設定したアタッチメントを用いて樹モデルを作成しました.撮影した動画から三次元点群を作成し,スケルトン,トポロジーグラフ抽出を行います.このグラフを用いて主成分分析 (PCA)を行い主幹と主枝,主枝間の角度を計測します.また円柱フィッティングを用いて半径の計測を行います.

Fig. 2:計測結果

結果として,結果から本手法は,枝角度を数度程度,枝半径を数ミリメートル程度の誤差で計測できることが確認されました.

今後は,枝の角度を自動で計測するアルゴリズムの開発や年度の異なる樹の点群を重ね合わせ,差分の分析を行い新規枝の長さを比べ,元気度の評価を進めていこうと考えています.

Publication

  1. 収量予測のための三次元点群処理と骨格化による樹モデルの枝半径・角度の計測と評価 ,竹田 朝哉,築地原 里樹,高橋 泰岳,The 9th Workshop of Robotics Ongoing Breakthroughs (ROOB2025), 2025.9.6.

空手の前蹴り動作における腰と支持脚に着目した関節トルク・CoPの解析によるバランスの評価

私の長年の空手の経験と空手の教本の教え方に感覚的な違いがあり,教本には初心者の問題点の原因が記されていません.そこで,熟練者と初心者の前蹴り動作を比較し,教本のコツが定量的なデータで裏付けることができるのかを確認することを研究目的としています.

Fig. 1:フォースプレートの位置(左:支持脚,右:蹴り脚)

実験には光学式モーションキャプチャシステムとフォースプレートを使用し,支持脚と蹴り脚の2箇所にフォースプレートを設置し,各被験者の前蹴り動作を計測します.(Fig. 1).

Fig. 2:Dhaibaworks上の姿勢再現(左: モーキャプデータ,右: 再現結果)

実験で取得したデータから関節角度・キック力・CoP(足圧中心)を計算し,解析ソフトDhaibaworksを用いて姿勢再現することで逆動力学解析により関節トルクを算出します(Fig. 2).これらのデータを解析・比較した結果,腰と支持脚に着目すると教本に記載されたコツとは違う結果が導出され,初心者はバランス保持とキック力の両立が難しいことが示唆されました.

今後の課題は被験者を増やし,左右の脚の前蹴りの比較を行い,前蹴り以外の他の蹴り技の分析をしたいと考えています.

Publication

  1. 空手の前蹴り動作における腰と支持脚に着目した関節トルク・CoPの解析によるバランスの評価,増田 賢太郎,築地原 里樹,高橋 泰岳,The 9th Workshop of Robotics Ongoing Breakthroughs (ROOB2025), 2025.9.6.

内・外的焦点に着目したバスケットボールのVR対人ドライブ動作改善システムの開発

バスケットボールのドライブ動作では,クロスステップにおける「1歩目の踏み込み」「タイミング」「低い姿勢」等が重要ですが,初心者にとってこれらを同時に習得するのは難しです.そのため,各要素を分けて理解する必要があります.

本研究では,注意の焦点を胴体姿勢に焦点を当てる内的焦点,踏み込み位置に焦点を当てる外的焦点に分け,VR機器を用いて直感的なフィードバックを提示する焦点別訓練を実施しました.加えて,訓練者の習熟度に応じて内的・外的焦点の訓練を切り替えることで,ドライブ動作の改善を検証しました.

Fig. 1:外的焦点の訓練
Fig. 2:内的焦点の訓練

VR空間においてバスケットボールのドライブ動作の訓練を行うため, 本研究では自身の胴体姿勢を意識した内的焦点の訓練と相手のディフェンスを意識した外的焦点の訓練を実装しました.

内・外的焦点それぞれの訓練に共通するVR環境における基本情報として,①バスケットボールの表示,②仮想ディフェンスの表示,③左腕の表示,の3つのフィードバックを構築しました.

外的焦点を意識した訓練では,相手のディフェンスの位置を見て適切な踏み込み位置やタイミングを判断できるように指導するため,④踏み込み位置とタイミングの指導,⑤踏み込み位置と左足の軌跡の表示,⑥俯瞰映像の表示のフィードバックを実装しました(Fig. 1).

また,内的焦点を意識した訓練では,ボールをかまえた時と1歩目を踏み込んだ時の自身の姿勢を理解できるように指導するため,⑦熟練者の姿勢マネキンと訓練者の胴体姿勢,⑧胴体姿勢指導テキスト表示のフィードバックを実装しました(Fig. 2).

Fig. 3:腰の沈み込み量の結果(①内的焦点,②外的焦点,③内的焦点と外的焦点の比較)
Fig. 4:ボールをかまえた時の胴体の屈曲の結果(①内的焦点,②外的焦点,③内的焦点と外的焦点の比較)
Fig. 5:1歩目を踏み込んだ時の胴体の屈曲の結果(①内的焦点,②外的焦点,③内的焦点と外的焦点の比較)
Fig. 6:1歩目の踏み込み位置とディフェンスとの距離の結果(①内的焦点,②外的焦点,③内的焦点と外的焦点の比較)
Fig. 7:1歩目の踏み込み位置とディフェンスとの角度の結果(①内的焦点,②外的焦点,③内的焦点と外的焦点の比較)

バスケットボール初心者6名を対象に,外的焦点(踏み込み位置)と内的焦点(胴体姿勢)の2種類のVR訓練を実施し,訓練前後で現実空間におけるドライブ動作(姿勢や踏み込み位置など)を比較しました.結果は両訓練とも動作の安定性や姿勢の改善が確認されましたが,胴体姿勢や腰の安定性は内的焦点が(Fig. 3,Fig. 4,Fig. 5),踏み込み位置やディフェンスとの距離・角度は外的焦点がより大きく改善する傾向が示されました(Fig. 6,Fig. 7).

今後は被験者を増やして実験を行い,各訓練ごとの改善効果の特徴を分析し,長期的な訓練に取り入れていくことや,ユーザの習得が不十分なスキルに応じたトレーニングメニューを作成することが考えられます.

Publication

  1. 内・外的焦点に着目したバスケットボールの VR 対人ドライブ動作改善システムの開発, 池田 拓真,築地原 里樹,高橋 泰岳, 第25回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会 (SI2025), pp. 3994-3999, 2025. 12.12.

発達性ディスレクシアの児童のためのタイピングアプリを用いた支援方法の検討

発達障害の一つである発達性ディスレクシア(DD)は,知的な遅れや視聴覚障がいが無いにも関わらず読字・書字能力を獲得することに困難さがある.このような児童が定型発達児と同様に教科学習を行うための研究の一環として,当研究室ではDDの特性のためにタイピング練習に困難さを覚える児童のために,キーボードのキートップのアルファベットを色に置き換え,ローマ字を意識せずにタイピングの練習をできるタッチタイピング練習支援アプリを開発した.

上述のタイピングアプリを用いたタイピング練習を行った児童の中にお題表示に視線を向けずにタイピングしている児童が存在する.このような児童はお題とキーを結びつけて覚えることができていないことが予想できる.本研究では,このような児童のお題注視割合を向上させることを目的とし,「グラデーション表示」を追加した.グラデーション表示ではキーボードのみ遅れて表示することで一度お題に視線を向けたのちにキーボードイラストに視線を向けるよう視線誘導を行う.キーボードイラスト表示あり,なし条件にグラデーション表示条件を加えた3条件下で視線計測実験を行い,お題注視割合を比較した.

Fig. 1:グラデーション表示

グラデーション表示を用いた際にキーボードイラスト表示あり条件と比較して有意にお題注視割合が高いという結果を得ることができた.また,キーボードイラスト表示あり条件ではお題を全く見ずにキーボードイラストのみを見てタイピングしていたが,グラデーションを用いるとお題のみを見てタイピングする児童も確認できた.このことから,グラデーション表示を用いることでタイピング時の視線誘導が可能であると考えられる.

また,タイピング練習中の児童でキーボードイラストのみを見てタイピングしていた児童もグラデーション表示ではお題を見てからキーボードイラストを見ていたことから,グラデーション表示を用いて練習を行うことでタイピング練習時の視線の流れを身につけることができると考えられる.

今後の展望として,DDでない児童の人数が少なかったことから人数を増やして実験を行うことでより精度の高い比較を行うことや,WAVES検査などのスクリーニング検査を行い,特徴を調査することなどが考えられる.

Publication

  1. 発達性ディスレクシアの児童のためのタイピングアプリを用いた支援、反町真熙、高橋泰岳、平谷美智夫、築地原里樹、第 24 回発達性ディスレクシア研究会福井大会、2025.10.12-13