ヒューマノイドロボットの動作生成のための手先押し力を使った階段昇り動作の姿勢や逆動力学解析

工場内移動には階段昇降が伴うため,人間・ロボットともに負担の少ない動作が求められます.しかし手先押し力を用いた階段昇り動作や関節負担に関する研究は少なく,ヒューマノイドロボットへの応用も進んでいません.そこで本研究では,手先の押し力を発揮するヒューマノイドロボットの開発を目指し,手先を推進力として活用した階段昇段動作の解析を行っています.

Fig. 1:計測に使用する階段

手摺有り・無しの階段昇段動作を対象として解析しました.被験者に手先押し力を自然に活用させる為,5分程度の階段昇降運動を実施し疲労させた後,計測を行います.身動作の計測には光学式モーションキャプチャを使用し,手先押し力の取得に6軸力覚センサ,一段目での床反力の取得にはフォースプレートを用いました(Fig. 1).

Fig. 2:手摺使用による胴体トルクの変化

計測したデータから腰椎屈曲角度や関節トルクを解析した結果,手摺に対して力を発揮することで各関節トルクは増加しますが,それによって腰前屈負荷を減少させていることが示唆されました(Fig. 2).

今後は被験者を増やし,他ステップにも目を向け,階層的クラスタリングを用いて個人差を考慮した解析を行っていきます.

狭い空間への収納動作における冗長性を活用した収納動作の動作解析

ヒューマノイドロボットは人間と類似した構造を持っており,冗長性があります.人間は冗長性を活用することで,衝突回避や操作性の向上などを実現しているため,動作の特徴をヒューマノイドに応用することが期待されていますが,人間の動作の特徴はあまり解明されていません.そこで本研究では,狭い空間への収納動作に着目し,人間の冗長性を活用した動作の解析を行っています.

Fig. 1: 計測環境

実験では,使用可能な空間を制限した箱にグラスを収納する動作を対象としました.全身動作の計測には光学式モーションキャプチャを使用し,物体操作のタイミング取得に6軸力覚センサ,バランスの取得にはフォースプレートを用いました(Fig. 1).

Fig. 2: 異なる収納空間条件における肘の高さと胴体の側屈(広い: 左,狭い: 右)

モーションキャプチャデータから胴体の傾きや捻り,肘や肩の関節角度,肘の高さを解析した結果,狭い空間にものを収納する際は肘を高く持ち上げて収納し,その際に胴体の側屈が利用されていることが示唆されました(Fig. 2).

今後は,階層的クラスタリングを用いて個人差を考慮した解析を行っていきます.